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おっと速読術の悪口はそこまでだ
◎知だらけ039:遅読のすすめ 厳選した本は、じっくりと読みたいものです。速読法なるものが、喧伝されています。塾長はナンセンスだと思っています。著者が丹精をこめた1文字1文字を味わいながら読むのが、正しい読書の方法です。「山本藤光の文庫で読む500+α」では、山村修『増補・遅読のすすめ』(ちくま文庫)を紹介しています。ちょっとだけ、引用させていただきます。――山村修は1冊の本を、「1ページ1秒、ちょっと遅くても2、3秒」という読書を完全否定しています。これを実践していると豪語する2人の評論家を、冒頭でばっさりと切り捨ててみせます。福田和也『ひと月百冊読み三百枚書く私の方法』(PHP文庫)や立花隆『僕が読んだ面白い本・ダメな本 そして僕の大量読書術・驚異の速読術』(文春文庫)に対して、眉に大量の唾をつけて笑いとばしてみせます。 以下は「山本藤光の文庫で読む500+α」におけるフローベール『ボバリー夫人』の書評の一節です。引用してみます。 ――山村修『増補・遅読のすすめ』(ちくま文庫)を読んでいて、教えられたことがあります。山村修が3度目の遅読で発見した個所です。 再会をはたしたエマとレオンは、辻馬車に乗りこみます。馭者に命じてひたすら馬車を走らせつづけます。馬車の窓かけはおろされ、平坦な道でも馬車は激しく揺れます。そして山村修は、つぎの場面を読み落としていたことに気づくのです。もちろん私はいともさらりと読み落としていました。――馬車の古ぼけた銀の側灯に陽の光が照りつけていたころ、野原のまんなかで、小さな黄色の窓掛けの下から、手袋をはめない手が一つでてひきちぎった紙きれを投げた。それは風に散って、その向こうに今を盛りと咲いているレッドクローバーの畑へ、白い蝶のように舞い降りた、(新潮文庫P337) この官能的な場面の読み落としは、読書人にとって致命的なことです。遅読の大切さを実感させてくれた貴重な一文でした。山本藤光2017.12.06